僅かなる疑念

信じなければならぬ道があった
疑わねばならぬ者がいた
足が竦み もう動けないというのに
それでも 歩まなければならぬ日々があった


これ以上何を失えば
私は もう失わずにすむのであろう
失わぬために 何かを 失おうとしている
失わぬために 捨てることをよしとしている
あの者の流す雫など 一粒たりとも目にしたくないと
今も 身体が叫んでいるのに
捨てることをよしとしている 我が魂の惨めさを
いったい誰が許してくれよう

信念を貫けぬ
足下にざわめく腕たちに逆らえぬ
四肢を吊る糸から逃げられぬ
自らの選択など ただの偶像でしかない
知らぬうちに 抗う術を忘れ去っていた


信じなければならぬ道があった
疑わねばならぬ者がいた
足が竦み もう動けないというのに
それでも 歩まなければならぬ日々があった
それは 自ら選択した道ではない

我が魂は
暗闇で這い蹲っている
笠鷺 くう
2006年03月12日(日) 20時47分51秒 公開
■この作品の著作権は笠鷺 くうさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
他人に強要され歩いてきた道。
その道を歩むために疑わなければならなかった人達。
嫌だ、と身体が叫んでいるというのに。

抗えない。
疑えない。
こうなってしまった自分は、もう他人の操り人形でしかない。

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